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農地の納税猶予を受けるメリットは?注意点も解説

カテゴリ:不動産売却/買取

● 農地を相続したときの相続税について知りたい
● 相続した農地に家を建てても納税猶予は適用される?
● 猶予を受けるための手続きの方法が知りたい

近年、就農する若年層の数は増加傾向にあります。
農地の相続や農業を営む親の引退を機に、農業を始める人も少なくありません。
この記事では、農地を相続した人に適用される「農地等の納税猶予」を解説します。

この記事でわかること

● 農地の納税猶予の概要
● 納税猶予のメリットとデメリット
● 農地の納税猶予の手続き

農地の納税猶予制度とは?

納税猶予は、相続人が農地を引き継いで農業を営むと適用される、相続税が優遇される特例制度です。
面積の広い農地の相続税を宅地と同じ方法で計算すると、税額が高くなってしまいます。
高額な相続税の支払いは後継者が農業を続ける妨げとなるため、納税を猶予する特例が設けられました。
猶予される納税額の算定には、「農業投資価格」が使われます。
「農業投資価格」は、農業の継続を前提とする土地の売買価格で、国税庁によって都道府県や地目ごとに定められたものです。
地域によって評価額は異なりますが、いずれも通常よりは安く設定されており、10アールあたりの農業投資価格はおよそ20~90万円です。
農地の本来の価額と、農業投資価格の差額分に対する相続税が猶予されます。

農地の納税猶予制度の適用要件

納税猶予の特例が適用されるには、被相続人・相続人・農地それぞれに定められた要件があります。
被相続人が亡くなる日まで農業を営んでいるか農地を生前一括贈与しているほか、特定貸付けや認定都市農地貸付け、農園用地貸付けをおこなっているかのいずれかが要件です。
生前一括贈与とは、推定相続人のうち1人に、経営するすべての農地を贈与する行為を指します。
相続人に求められる要件は、相続税申告の期限までに農業経営を始めているか生前一括贈与を受けた人、特定貸付けあるいは認定都市農地貸し付け等を相続税の申告期限までにおこなった人です。
農業経営を始めた相続人が要件に該当するには、経営を継続しなければなりません。

また、農地に関しては、被相続人が農業に用いていたか、特定貸付けをしていた農地等と定められています。
被相続人が認定都市農地貸付、農園用地貸付けをしていた農地等も該当します。
納税猶予の対象となるのは、被相続人が農業に使っていた土地が原則です。

しかし、一定の要件を満たして貸付けられた農地も対象とされます。
「認定都市農地貸付け」と「農園用地貸付け」の概要は、国税庁のホームページで確認できます。

納税猶予制度のメリット

相続した農地は相続税の対象です。
評価額が宅地並みに高額だったり面積が広かったりすると、相続税を納税するために土地の売却を余儀なくされ、農業を継続できません。
そこで、農地を相続する方が検討すべきなのが納税猶予制度です。
ここからは、農地の納税猶予のメリットを解説します。

農業を継続すれば相続税が優遇される

農業を引き継いで継続すると、相続税に関して優遇されます。
一般的に農地の面積は広く、価額は高額です。
宅地よりも低めに設定されていますが、なかには宅地同様の土地もあり、相続税が想定より高額になるケースもあります。

納税猶予制度で優遇されるのは、相続財産に対する相続税額と農業投資価格に対する税額の差額分です。
都道府県ごとに設定されている農業投資価格は、国税庁のホームページで公開されています。
令和5年の東京都の農業投資価格を例に挙げると、10アールあたり田が900千円、畑は840千円、採草牧草地510千円です。

優遇例として、1人の相続人が1,000アールの畑のみを相続したケースで猶予される税額を紹介します。
土地の評価額を3億円とし、基礎控除3,600万円を差し引いた2億6,400万円が課税対象です。
相続税率45%を乗じ、控除額2,700万円を差し引いた相続税額は9,180万円となります。
農業投資価格を10アール84万円で計算すると、評価額は8,400万円です。
税率20%、控除額200万円で通常の評価と同じように計算すると、農業投資価格による税額は760万円なので、差額の8,420万円が納税猶予額です。
実際の相続税額は、相続する財産の総額や地域により異なるため確認してください。

要件を満たすと事実上免除される

農地の納税猶予を受けた人が要件を満たすと、相続税が免除されます。
被相続人の要件に該当するのは、以下のいずれかです。

● 亡くなる日まで農業を営んでいた
● 農地を生前一括贈与している
● 営業困難時貸付けを受け、税務署長への届出をした
● 特定貸付け等を亡くなる日までおこなっていた

営業困難時貸付けは、納税猶予を受けている人が病気などの理由で経営が難しくなった場合に、農地を貸付けられる仕組みです。

免除されるための相続人に該当する要件は、以下のいずれかです。

● 相続税の申告期限までに農業の経営を始め、継続が認められる
● 農地等に一定の権利を設定して経営を移譲、税務署長への届出をした農地等の生前一括贈与特例の適用者
● 営農困難時貸付けと税務署長への届出をした農地等の生前一括贈与特例の適用者
● 特定貸付け等を相続税の申告期限までにおこなった

要件は、農地に関しても設けられています。

● 被相続人が農業に使用していた農地等
● 被相続人が特定貸付け等をしていた農地あるいは採草放牧地
● 被相続人が営農困難時貸付けをしていた農地等
● 生前一括贈与を受けた農地等のうち、被相続人の死亡の日まで贈与税の納税猶予か納期限延長の特例の適用を受けていた
● 相続や遺贈で財産を取得した人が、相続開始の年に生前一括贈与を受けていた

上3つの農地の要件は、遺産分割が相続税の申告期限までにおこなわれたものに限るとされています。
農業を続けようとする相続人にとって、納税猶予は大きな恩恵を受けられる制度です。

しかし、要件を満たさなくなったときや、さらに次の代への相続も考慮しなければなりません。

納税猶予制度のデメリットと注意点

相続した農地で農業を続けるには、納税猶予制度は利用を検討したい特例です。
ただし、次の相続では、土地の活用方法や相続対策の選択肢が少なくなってしまいます。
特例の要件を満たさなくなった場合のリスクも考慮が必要です。
納税猶予制度を検討する際は、デメリットと注意点もあらかじめ把握しておきましょう。

要件を満たさなくなったら納税しなければならない

納税猶予の特例適用に必要な要件を満たさなくなった場合は、納税の義務が発生します。
猶予されていた相続税の一部、あるいは全額の納付や猶予分に対する利子を納付しなければなりません。
特例を受けていた農地を宅地にしたり売却したりすると、猶予は取り消されます。
農業をやめた場合も同様です。
継続届出書の提出を怠るほか、増担保や担保の変更の求めに応じない場合も、一部あるいは全額の猶予が打ち切られます。

納税猶予の適用を受ける際には、土地の活用方法や農業経営を継続するかどうかを慎重に検討しましょう。
農業を続けず、相続税や管理が負担になる場合は、農地を売却する選択肢があります。
農地の売却活動期間は長期にわたる可能性があるため、早めの着手が必要です。
農地の相続に関しては、あらかじめ計画を立てておきましょう。

相続人以外が譲渡された場合は利用できない

農地の納税猶予は、土地の受贈者が相続人である必要があります。
配偶者や子、兄弟など、民法で定められている相続人以外に寄贈や贈与をした場合は、特例の適用対象にはなりません。
特例が適用されるのは、推定相続人で18歳以上とされています。

また受贈者は、3年以上継続して農業を営む「認定農業者等」でなければなりません。 相続人であっても、相続した人が学生や未成年で農業経営ができない場合も注意が必要です。
同居し、同一生計にある家族が農業経営をすれば特例が適用されます。
ただし、相続人が成人あるいは卒業後、農業に従事しなかった場合は適用を取り消されます。
未成年であっても、生計を一にしなくなったら適用されないので注意してください。

共同名義の相続では全員が適用対象ではない

農地の共同名義での相続は可能ですが、特例が適用されるための要件は、土地が農業に用いられているだけではありせん。
農地を共同名義で相続し、全員が納税猶予の適用を受けたいときは、相続者全員が農業を営む必要があります。

特例の適用要件には、共同で相続したケースは排除されていません。
そのため、農業経営をおこなう全員が特例の適用を受けられます。

しかし、相続人の1人だけが農業経営をおこなった場合は、ほかの相続人は納税猶予の適用外です。
農業をおこなっている相続人のみが特例を受けられます。
相続人が未成年であれば、同居する同一生計者の農業経営が必要です。

納税猶予の適用を受けるための手続き

納税猶予の適用を受ける手続きは、必要な書類を集めるために時間がかかるケースがあります。
必要書類と手続きの手順を理解し、早めに申請するようにしましょう。

相続税の申告

納税猶予の特例適用には、必要書類を添付して相続税を申告する必要があります。
手続きの大まかな流れは以下のとおりです。

1. 「相続税の納税猶予に関する適格者証明願」を農業委員会に提出
2. 農業委員会による農地の確認
3. 「相続税の納税猶予に関する適格者証明書」などの発行
4. 「納税猶予の特例農地の農地等該当証明書」の取得
5. 必要書類を添付し相続税の申告書を提出

必要書類のうち、「相続税の納税猶予に関する適格者証明書」と「特例適用農地の明細書」は農業委員会に申請します。
「納税猶予の特例適用の農地の該当証明書」は、市町村役場に申請し取得してください。 相続税の猶予額と利子税に見合う担保に関する書類も必要です。
書類の発行には時間がかかる場合があるため、相続税の申告期限に間に合わせられるよう、早めに手続きしましょう。

継続届出書の提出

納税猶予が適用されたら、相続税の申告期限から3年ごとに「継続届出書」の提出が必要です。
提出をしなければ猶予税額すべてが打ち切られてしまうため、忘れないでください。
必要なのは「農業を引き続きおこなっている旨の農業委員会の証明書」「特例農地等の異動明細書」「特例農地等に係る農業経営に関する明細書」です。
書類の提出方法は、書面で作成し持参するか、送付も可能です。
e-Taxソフトで、PDFファイルに変換した書類を提出する方法もあります。
添付書類の様式は、国税庁のホームページからダウンロードできます。

まとめ

農地を相続して農業経営を継続すれば、納税猶予の特例が適用されます。
特例の適用には、被相続人や相続人、土地に設けられた要件を満たしておかなければなりません。
要件を満たさなくなると取り消されるほか、利子税を払う必要もあるため注意が必要です。
メリットだけでなく、リスクも考慮したうえで検討してください。

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