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農地を無償譲渡するメリットは?方法や注意点を解説

カテゴリ:不動産売却/買取

● 相続した農地を活用できずに困っている
● 無償譲渡にはデメリットがある?
● 無償譲渡せずに農地を手放す方法はある?

農業を経営していない方が農地を相続しても、活用できずに困ってしまいます。
なかには、農地を無償譲渡する方もいますが、一般的な土地とは異なる手続きが必要です。

この記事では無償譲渡のメリット・デメリット、手続きの方法や農地の処分方法を解説します。
農地の活用や処分を検討する際の参考にしてください。

この記事でわかること

● 農地無償譲渡のメリット・デメリット
● 無償譲渡の手続き方法と注意点
● 無償譲渡以外の農地を処分する方法

農地無償譲渡のメリット・デメリット

使われていない農地にはいくつかリスクがありますが、無償譲渡で回避できます。
実際にはどのようなリスクを回避できるのか、無償譲渡のメリットを解説します。
デメリットもあわせて、参考にしてください。

管理費や固定資産税の対策ができる

農地を所有していると、活用していなくても最低限の管理費や固定資産税がかかります。
固定資産税は、毎年1月1日時点で所有している不動産に課される地方税です。
農地の評価額は一般的に住宅よりも低いため、大きな負担にはならないと考える方もいるでしょう。

しかし、農地は大きく4種類に分けられ、それぞれの評価額が異なる点に注意が必要です。

引き続き農地としてみなされる土地であれば評価額が低いのに対し、いずれ宅地に変更される可能性がある場合は評価額が高くなります。

なかでも、「特定市街化区域農地」の税額は住宅とほぼ同じです。
固定資産税を農地評価で計算すると10aあたり数千円ですが、宅地並評価で計算されると数万円から数十万円かかります。

固定資産税以外にも、定期的な草刈りなどの管理費も所有者にとっては経済的負担です。
管理費と固定資産税を支払い続けていた所有者が亡くなった場合、相続する子どもや孫に負担が引き継がれます。
無償譲渡すれば、自分や次の世代にかかる負担を軽減できる点がメリットの1つです。

環境悪化のリスク軽減

活用されていない農地は、雑草が生い茂ったり害虫や害獣が発生したりします。
山間部にある土地の場合、鹿やイノシシなどの野生動物がエサ場にするため、近隣の農作物に被害を与えるケースも問題となっています。
害虫や害獣が隣接する農地に被害をおよぼすと、損害賠償を請求される可能性があるため注意と適切な管理が必要です。

また、荒れた土地は不法投棄されやすく、放火のターゲットになるケースもあり、ゴミの撤去費用や火災による被害の賠償責任などは、所有者にとって大きな負担です。
農地が荒廃すると再び耕作する際に再生作業が必要になり、多大な労力を必要とするだけでなく、周囲の景観を悪くします。
景観の悪化や雑草、害獣などのリスクは、近隣からのクレームの原因になるため、所有者にとって経済面だけでなく心身にも負担がかかります。

農地を放置した期間が長くなると土壌の質が低下し、再び耕作するには多大な手間と時間が必要です。
農地を放置するより、活用してくれる人に無償譲渡したほうが、自分の負担だけでなく周囲への悪影響のリスクを回避しやすいでしょう。

譲渡先が見つかりにくい

不要な農地の無償譲渡は元々の所有者にはメリットがありますが、引き取り手がなかなか見つからない一面もあります。

農地の譲渡や売買をおこなう場合、農地法に基づき農業委員会の許可が必要です。
許可を得るには、基本的に農業従事者でなければなりません。
新しい所有者が農業をおこなう前提で許可されるため、必然的に農業従事者に限定されます。

近年、農業を営む人は減少傾向にあり、農地の譲渡を受ける人を見つけるのは困難になる可能性があります。
農地として譲渡するのが難しければ宅地に転用して譲渡する方法もありますが、こちらも農業委員会や都道府県知事の許可が必要です。
申請しても許可されないケースもあるため、必ず転用できるわけではありません。

無償譲渡では、課せられる税金にも注意が必要です。
個人から個人への譲渡であれば、譲渡を受けた人に贈与税が課せられます。

しかし、法人へ譲渡した場合は、譲渡する人に「みなし譲渡所得課税」が課せられます。
無償譲渡には固定資産税や維持管理のリスク回避のメリットがある反面、デメリットがある点も理解しておきましょう。

農地無償譲渡の手続きと注意点

農地を無償譲渡する際は、一般的な土地や住宅とは異なる手続きをしなければなりません。 こちらでは、手続きの方法や流れ、注意点を解説します。

農業委員会への許可申請

農地を譲渡する際は、農業生産力の維持拡大を目的として定められた農地法第三条により、農業委員会の許可が必要です。

譲渡に限らず、売買や貸し出す場合も同様に許可を得なければなりません。
契約や名義変更をする前に、農業委員会へ許可申請をおこないましょう。
農業委員会への許可申請では、申請書のほか農地の登記簿謄本や耕作証明書など、市区町村ごとに定められた書類を提出します。
許可されるには譲渡先が農業従事者であることが条件で、許可なくおこなった譲渡は原則無効です。
譲渡する農地が転用される予定であれば、農業委員会を通じて都道府県知事の許可をもらう必要があります。

ただし、市街化区域内に指定されている土地であれば、都道府県知事の許可は必要なく、農業委員会への届出だけで転用・譲渡が可能です。

贈与契約書の作成

農地の譲渡に双方の合意があれば、口約束でも問題はありません。

しかし、不動産を譲渡した場合は贈与税が発生する可能性があるため、贈与契約書を作成しておきましょう。
贈与契約書を作成しておけば、贈与がおこなわれた事実を客観的に証明でき、トラブルに発展するリスクも軽減できます。

また、相続財産とみなされて相続税の税務調査がおこなわれても、贈与であると主張できます。
贈与契約書に記載する内容は以下のとおりです。

● 契約締結日や履行日
● 譲渡する人の氏名・住所
● 譲渡を受ける人の氏名・住所
● 譲渡される農地に関する情報
● 譲渡の方法

贈与契約書の書式や様式に決まりはありませんが、信憑性を持たせるために署名と日付は手書きで記入しましょう。
同様の理由で、押印には実印を使うのがおすすめです。

農地の情報は、特定しやすいように謄本を確認して正確に記載してください。
譲渡後の農地が農業に使用されるのか、転用されるのかも明確に記載する必要があります。 契約書は2通作成し、それぞれが保管しましょう。

農地の名義変更

契約の次は、農地の名義変更の申告を法務局へおこないます。
所有権移転登記には、以下の書類が必要です。

● 登記申請書
● 贈与契約書
● 譲渡する人の印鑑証明書
● 農地の権利書
● 譲渡を受ける人の住民票
● 贈与の許可指令書

所有者移転登記をする際は、登録免許税が必要です。

また、手続きを司法書士などに依頼する場合は、委任状も作成しましょう。
申請書や書類に不備がなければ、登記識別情報通知が交付されます。
所有者移転登記が完了したら、農業委員会への届出もしなければなりません。
農業委員会へは届出書のほか、市区町村で定められた書類を準備する必要があります。
市区町村役場に農業委員会の事務局が設置されているので、窓口で届出書を取得してください。

無償譲渡以外の農地処分方法

不要な農地を処分する方法は、無償譲渡だけではありません。
うまく活用すれば収入を得られる可能性もあるため、譲渡は最終手段と考えましょう。 ここからは、無償譲渡以外の農地の処分方法を紹介します。

売却する

農地を処分する方法の1つに売却があります。
農地として売却する場合、売却先が近隣の農家であれば農地法の許可を取るための条件が満たされているだけでなく、契約が成立しやすいメリットがあります。

ただし、価格だけでは交渉がうまくいかないケースもあるため、相手の立場を考慮した対応が重要です。
自分で売却先を見つけられない場合は、不動産会社に仲介を依頼する方法もあります。
売却先を探してもらうほか、手続きのサポートも受けられる点がメリットです。
農地の取り扱いに不慣れな不動産会社もあるため、専門の業者を探すとよいでしょう。

転用する

農地を農地として売却するには、相手が保有する農地と合わせて50a以上になるほか、農地すべてを効率的に利用できる営農計画があるなどの厳しい条件が定められています。
そのため、農地の売却が思うようにいかない可能性もあります。

農地としての売却が困難な場合は、転用を検討してもよいでしょう。
第1種農地や甲種農地、農用地区域内農地は原則転用できませんが、第2種農地か第3種農地に該当していれば転用できる可能性があります。

第2種農地とは土地改良事業の対象ではない生産力の低い農地を指し、第3種農地は市街地にある農地などです。
農業委員会・都道府県知事の許可が取れれば転用でき、駐車場の経営などの活用や売却もしやすくなります。
農地を転用するには手続きや初期費用が必要ですが、一定の収入を得られる手段として有効です。

相続放棄

農地が相続で取得するものであれば、相続放棄で処分できます。

ただし、相続を放棄する場合は、農地だけでなくほかの遺産もすべて放棄しなければなりません。
不動産を相続放棄しても、次に管理する人が決まるまでの間は相続人に管理義務がある点にも注意が必要です。

自分以外に相続人がいる場合は問題ありませんが、いなければ相続放棄と同時に家庭裁判所に相続財産管理人を選定してもらいましょう。
相続放棄は、相続があると知った日から3ヵ月以内におこなわなければならないため、期限を過ぎないように注意してください。

相続土地国庫帰属制度を利用する

相続放棄しなかった農地を処分したい場合は、2023年に施行された「相続土地国庫帰属制度」を利用する方法もあります。
国が国有地として土地を管理してくれるため、農地を管理する負担は少なく、放置して近隣に迷惑をかける心配もありません。

ただし、相続土地国庫帰属制度を利用するには条件が定められています。

たとえば、建物がある土地や担保権が設定されている土地、特定有害物質で汚染されている土地は引き取ってもらえません。
管理や処分に過度な費用や労力が必要な土地は、対象外とされています。

また、制度を利用する際は、管理費を10年分納める必要がある点も考慮しましょう。
農地の場合、一部を除いて面積に関わらず20万円納めなければなりません。
売却や転用、相続放棄ができない場合の選択肢として覚えておくとよいでしょう。

まとめ

農地の無償譲渡には、管理費や固定資産税の負担を軽減できるメリットがある反面、手続きに手間がかかったり譲渡先が見つかりにくかったりするデメリットもあります。
農地を処分したい場合は、売却や転用、相続土地国庫帰属制度などから、最適だと思われる方法を選びましょう。

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