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農地の相続放棄は可能!手続き方法と事前に確認すべき注意点を解説

カテゴリ:不動産売却/買取

● 農地を相続する予定があるけど相続したくない
● 農地の相続放棄はできるのだろうか?
● 相続放棄の手続き方法がわからない

ここではさまざまな事情によって農地を相続したくないと考えている方へ、農地を相続放棄できるか、また手続き方法や事前に確認すべき事項を解説します。

この記事でわかること

● 農地だけを相続放棄するのは不可能
● 相続放棄するときの手続き方法
● 相続放棄する前に確認すべき事項

農地の相続放棄はできる?

近年、地方にある実家を離れ、都市部で働く方が増えています。
実家の農地を引き継いでも管理できないため、農地を相続したくないと考える方も多いでしょう。
ここでは、農地の相続放棄は可能か、また相続放棄するメリット・デメリットを解説します。

農地を含めたすべての財産をまとめて相続放棄するのは可能

相続人は、原則被相続人のすべての財産を受け継ぎます。
財産には現金や不動産などのプラスの財産だけではなく、借金などのマイナスの財産も含まれます。

人によっては、管理・運用方法がわからない農地を受け継ぐ場合もあるでしょう。
農地を受け継ぎたくない場合の対処方法の1つが、相続放棄です。

相続放棄とは、相続人として得た相続権を放棄し、すべての財産を引き継がない方法です。 被相続人は農地だけではなく現金や有価証券、農地以外の不動産など、複数の財産を所有している場合が多いでしょう。

住宅ローンなど、被相続人が融資を受けた分の返済義務も相続の対象です。
相続放棄をすると、これらすべての財産に対する相続権と義務を失います。

注意すべき点は、相続放棄をすると一部の財産ではなく、すべての財産の相続権や権利を失う点です。
農地のみの相続を放棄して、他の財産や義務を受け継ぐ方法はありません。
農地の相続権を放棄する場合は、他の財産や義務も同時に放棄する必要があるため、慎重に判断しましょう。

農地を相続放棄するメリット

農地の相続放棄のメリットは、農地を管理しなくて済む点です。

特に遠方で暮らしている場合、管理が大きな負担になります。
自分で管理がおこなえない場合は第三者へ委託できますが、管理費用がかかるため、経済的な負担になるでしょう。

使い道がないからと相続後売却を試みても、農地の売却は困難な場合が多いです。
住宅地の場合は、不動産会社に仲介を依頼するなどして、売却できる可能性があります。

しかし、農地は食料の生産に欠かせない重要な土地です。
農地法によって用途変更や売買が規制されており、農地の売却は農家にのみ売却できるなど、限られたケースしか認められていません。
農地の相続を放棄すると、このような管理の手間や費用、売却手続きから解放されます。

また、被相続人が借り入れていた借金の返済義務を免れられる点もメリットの1つに挙げられます。
農業経営では倉庫の建設や農機具の購入、土壌改良用の肥料など、農協などから多額の資金融資を受けている場合が多いです。
多額な債務を相続すると、借金の返済に追われて生活が苦しくなる可能性があります。
相続を放棄すると、農地だけでなくマイナスな財産の相続義務が発生しません。

また、複数の相続人が相続する場合は遺産分割協議が必要になりますが、相続放棄すると協議への参加が必要ない点もメリットです。

遺産分割協議では、相続人の間で互いに権利を主張するなどしてトラブルに発展する可能性があります。
参加しなければ、家族・親戚間で起こるトラブルに巻き込まれずに済むでしょう。

農地を相続放棄するデメリット

相続放棄によるデメリットは、農地だけでなく、農地以外の財産を受け継ぐ権利も失ってしまう点です。
被相続人が所有していた財産のなかには、農地以外にも現金や有価証券など、重要なものが残っている可能性があります。
手放したくない財産が他にある場合は、農地の管理が難しい場合も、相続放棄は避けたほうがよいでしょう。

また、相続放棄による相続権の移動で、親族の関係が悪化しやすい点もデメリットの1つです。
同順位の相続人のなかで誰も財産を引き継がないときは、後順位の相続人へ相続権が移動します。
相続権の移動は、大きなトラブルを生む可能性があります。
相続権を得た人と被相続人の配偶者の関係が良くなく、相続財産に関してトラブルが発生したなどがその例です。
自分の兄弟だけではなく被相続人の配偶者や被相続人の兄弟姉妹、兄弟の子どもたちなど、関係が良好でないとトラブルが起こりやすいです。
相続権を放棄するのにともなって、親族の関係が悪化してしまうリスクも事前に考えましょう。

農地を相続放棄するときの手続き方法と注意点

相続放棄は、相続を知ってから3ヵ月以内に手続きしなければなりません。
期間内に手続きしなかった場合は、相続放棄を希望していても、相続を認めたと判断されてしまいます。
ここでは、相続放棄するときの必要書類や手続き方法、手続き時の注意点を解説するので参考にしてください。

手続きに必要な書類

相続放棄には、おもに以下の3つの書類が必要です。
● 相続放棄申述書
● 被相続人の住民票除票もしくは戸籍附票
● 申述人の戸籍謄本

相続放棄申述書は、家庭裁判所へ相続放棄を申請するための書類です。
相続放棄申述書には、相続を放棄する理由や相続財産の概略、被相続人と申述人の関係などを記載します。
書面は家庭裁判所のホームページから取得できます。
成人か未成年か、年齢によって相続放棄申述書の書面が異なるため注意しましょう。

住民票除票もしくは戸籍附票は、被相続人の死亡を証明するための書類です。
どちらも市区町村の役所で発行していますが、発行場所が異なるため注意しましょう。
住民票除票は被相続人の最終居住地、戸籍附票は被相続人の本籍地で発行できます。
申述人の戸籍謄本は、相続放棄を申請する本人のものが必要です。
戸籍謄本は、本籍地を置いている市区町村の役所で取得できます。

この他にも被相続人と申述人との関係によって、別の書類が必要となる場合があります。
また、収入印紙や連絡用の郵便切手も必要です。
必要書類に不備が出ないよう、申請前に家庭裁判所に確認し、早めに準備しましょう。

家庭裁判所に対する手続き

相続放棄の必要書類が準備できたら、すべてをまとめて家庭裁判所へ郵送します。
提出先は、被相続人が亡くなる前に住んでいた土地を管轄する家庭裁判所です。
申告期限は、相続を知ってから3ヵ月以内と定められているため、期限を越えないよう早めに郵送しましょう。

その後、家庭裁判所から照会書が届き、申述者に対して最終確認がおこなわれます。
これは、手続きに対して問題点や気持ちの変化などを尋ねるもので、問題が無い場合は必要事項を記入して送り返せば問題ありません。
照会書を送り返したあと、家庭裁判所から正式に相続放棄が認められた証として相続放棄申述受理通知書が届きます。

農業委員会に対する手続き

通常の土地では必要ありませんが、農地の場合、農業委員会で名義変更の手続きをおこなわなければなりません。
家庭裁判所への手続き完了後、農業委員会に対する手続きをおこないましょう。
この手続きは、農地を引き継いだ相続人がおこなうものです。
手続きする期限は相続開始から10ヵ月以内で、怠ると10万円以下の過料が課せられる可能性があります。

一般的に農業委員会は各市町村に設置されています。
届け出には、農地法で定められた届出書や相続登記後の登記事項証明書が必要です。
登記事項証明書は法務局だけでなく、オンラインでの取り寄せもできます。

手続き時の注意点

相続放棄の手続きには期限があります。
家庭裁判所への申請は相続を知ってから3ヵ月以内、.農業委員会での名義変更手続きは相続を知ってから10ヵ月以内におこなう必要があります。
手続きが遅れると罰金を課せられる場合もあるため、時間に余裕を持って必要書類を準備し、手続きを始めましょう。

また、相続放棄の手続きは弁護士や司法書士などに依頼ができますが、その場合は依頼費用がかかります。
普段の生活で見慣れない書類の準備や、本当に相続放棄が適切なのかの判断には、知識や経験がある専門家への相談がおすすめです。
しかし、依頼すればその分費用がかかる点には注意しましょう。

農地を相続放棄する前に確認すべき事項

相続放棄をすると、すべての財産や義務を受け継ぐ権利を失います。
相続権を失ったあとに、受け継ぐ価値のある把握していなかった財産を見つけても、相続できません。
ここでは、相続放棄を決断する前に確認すべき事項を2つ解説します。

管理義務

民法では、不動産を相続放棄した場合であっても、次に管理する人が見つかるまでは相続人に管理義務が残ると定めています。
相続放棄をすると、次の順位の相続人に相続権が移ります。

しかし、次の相続人が相続放棄しないか、すぐ管理を始められるかはわかりません。
次の相続人が管理できるようになるまでは、最後に相続放棄した人に不動産の管理義務が発生します。

また、他に相続人がいない場合、家庭裁判所に相続財産管理人を選任してもらう必要があります。
この手続きには1年以上の期間がかかるのが一般的です。
相続財産管理人が決まるまでの間は、元相続人が財産管理の責任を負わなければなりません。

農地は定期的に管理しないと、雑草が茂ったり不法投棄されたりする可能性があります。
周囲住民や自治体との間でトラブルに発展する可能性もあるため、相続放棄後も管理が必要な点は、事前に知っておきましょう。

相続放棄せずに農地を手放す方法

相続しても農地の活用・管理が難しい場合、相続放棄する方法もありますが、相続放棄せずに活用したり手放したりする方法もあります。
相続放棄を決断する前に、相続放棄以外の方法を確認してみましょう。

自分で管理・運用しない場合の農地活用方法では、売却が一般的です。
農地は農地以外の用途への転用が制限されていますが、農地として活用する場合は売買のハードルが下がります。

農地を営んでいる方をターゲットに販売活動すれば、買い手が見つかりやすいでしょう。
隣に農家が住んでいる場合、農地の拡大を希望して購入を検討してもらえる可能性があります。

また、遺産分割協議で農地を相続しない旨を伝える、財産放棄も1つの方法です。
財産放棄とは相続放棄と異なり、相続人の立場はそのままに、財産を受け継ぐ権利や義務のみを放棄する方法です。
古くから農家を営んでいると、親族のなかに農業経営者が存在するケースが少なくありません。
農地を受け継ぎたいと考える相続人がいる可能性もあるため、よく相談してみましょう。

まとめ

農業経営する予定がない方にとって、農地の相続は悩みの種になる場合が多いでしょう。
相続を放棄する方法もありますが、農地以外の財産を受け継ぐ権利も失ってしまいます。
相続放棄の決断は、他の財産や活用方法をよく確認したうえで、専門家へも相談して慎重におこなってください。

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