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死亡後の農地名義変更は必要?手続き方法や活用法を解説

カテゴリ:不動産売却/買取

● 農地を相続したら名義変更すべき?
● 農地の名義変更の方法が知りたい
● 名義変更した農地はどのように活用できる?

今後農業を経営する予定がないにもかかわらず、相続した財産に農地が含まれていて困っていませんか。
対応に困り、放置している方もいるのではないでしょうか。
名義変更をしなければ土地を活用できないばかりか、罰則を受ける可能性もあるため適切な手続きをおこないましょう。

この記事でわかること

● 死亡後の農地名義変更の必要性
● 農地名義変更の流れや必要な書類
● 名義変更した農地の活用法

死亡後の農地名義変更手続きは必要?

相続した農地の名義変更は、できるだけ早く済ませておきましょう。
相続登記をせずに放置すると罰則を課されるだけでなく、トラブルの発生や活用できないリスクがあるからです。

権利関係や手続きが複雑になる

所有者の死亡後に農地の名義変更をしなければ、登記簿の名義は被相続人のままです。
そのまま相続した人が亡くなってしまうと、さらに次の相続人へ引継がれますが、権利関係が複雑になってしまいます。

名義変更をせずに相続を繰り返すほど相続人の対象者が増えていき、名義を確定しようとしても遺産分割協議が難航する可能性があります。
相続人同士に面識がなければ所在を確認できず、協議にいたっても全員の合意を得るのが困難になるかもしれません。

また、世代をまたいで名義変更をしていない場合、これまでに発生した相続ごとの相続登記の手続きが必要です。

それぞれ、すべての相続人の遺産分割協議の合意か、出生から死亡までの戸籍を用意しなければならず、手続きが複雑になってしまいます。

相続登記の義務がある

所有者のわからない土地の問題を解消するため、2024年4月1日から相続登記の申請が義務化されました。

相続登記とは、土地などの不動産を所有する名義人が死亡した際、名義を相続人に変更する手続きです。
農地の相続が決定したら3年以内に登記申請をしなければならず、法改正以前に相続した土地で相続登記がされていない場合も対象です。

相続人の病気など、正当な理由がなく期限までに名義変更をしなければ、10万円以下の過料を支払わなければならない可能性もあるため注意してください。

遺産分割協議が難航して期限内に相続登記ができない場合は、改正法に新設された「相続人申告登記」をおこないましょう。
相続人が暫定的に手続きをおこなっていれば、義務を履行したとみなされ罰則を免れます。

売却や活用ができない

なかには、相続した農地の売却を検討している方もいるのではないでしょうか。

しかし、土地の売却や賃貸は、名義人にしかできません。
たとえ相続人であっても名義変更をしていなければ売却や活用ができず、固定資産税や管理費用などのコストばかりがかかってしまいます。
名義を変更していなくても、固定資産税は支払わなければなりません。

また、先述のとおり長期間名義変更されなかった土地の相続登記には手間や時間がかかるため、すぐに売却できない可能性もあります。
買い手が決まってから名義変更しようとしてもスムーズに手続きができず、売却が白紙に戻ってしまう可能性も考えられます。

さまざまな理由から、相続が発生したら速やかに名義変更の手続きをおこないましょう。

農地名義変更手続きの流れと必要書類

農地は食料安定供給の観点から特殊性の強い不動産のため、相続では農地法が関わります。
名義変更の手続きは住宅や一般的な土地とは異なり、相続人全員の同意や法務局への登記申請のほかに農業委員会への届出が必要です。
ここからは、手続きの流れや必要な書類を解説します。

法務局への相続登記

農地の名義変更手続きでは、まず法務局で相続登記をする必要があります。
申請方法には窓口・郵送・オンラインがあり、基本的な流れは一般的な不動産と同じで、以下が必要な書類です。

● 被相続人の連続した戸籍謄本・戸籍附票
● 相続人の戸籍謄本・住民票
● 遺言者あるいは遺産分割協議書
● 相続人の印鑑証明書
● 固定資産評価証明書

農地を相続したら、できるだけ早く上記の書類を集めましょう。

「連続した戸籍謄本」とは、出生から亡くなるまでのすべての期間を揃えた戸籍謄本です。
「戸籍附票」は、本籍地のある市区町村で戸籍の原本と一緒に保管されている、これまでの住所の記録です。
戸籍謄本や戸籍附票は、被相続人の本籍がある市区町村役場で、1通450円から750円で取得できます。
広域交付制度により、本籍地が遠くても戸籍を取得できるようになりましたが、昔の記録や附票は窓口で取得しなければなりません。
相続人が複数いる場合、相続人に関する書類は全員分が必要です。

固定資産評価証明書は、土地や建物の評価額を証明する書類で、市区町村によって発行されます。

必要書類が揃ったら、申請書を作成して提出します。
申請書には細かいルールが設けられているので、不備がないように作成しましょう。
申請時には登録免許税を支払う必要があり、税率は固定資産税評価額の1000分の4です。
書類や申請書に不備がなければ登記識別情報通知が交付されるので、登記簿謄本で名義を確認して手続きは完了です。

農業委員会へ届出

相続登記が完了したら、次に市町村の農業委員会への届出が必要です。
農地利用の最適化を目的として、農業委員会が権利の変動を把握するために義務づけられています。
農業委員会への届出は相続を知ったときから10か月以内におこなわなければならず、期限を過ぎてしまうと、10万円以下の過料を求められる可能性があるため注意が必要です。
万が一遺産分割協議が長引きそうな場合は、いったん相続人全員で届出をおこないましょう。

市区町村の役場内に農業委員会の事務局があるので、必要書類を準備して窓口で提出してください。
提出すべき書類は以下のとおりです。
● 届出書
● 全部事項証明書
● 公図(写)の原本
● 案内図
● 被相続人の連続した戸籍謄本
● 相続人の印鑑登録証明書
● 遺言書もしくは遺産分割協議書
● 委任状

届出書は農業委員会の窓口やインターネットから取得できます。
そのほかの必要書類は市区町村ごとに異なる可能性があるため事前に確認しましょう。
届出書には、相続した人の氏名や住所のほか土地の所在等、権利取得日、農業委員会によるあっせんを希望するかどうかを記入します。

もし、相続人が農業を受け継げない場合でも、希望すれば農地を活用してくれる第三者をあっせんしてもらえます。

代理人が申請する場合は、委任状や市区町村ごとに定められた書類の添付が必要です。

専門家に依頼する場合は、農業委員会への届出は行政書士、登記申請は司法書士が請け負ってくれます。
農業委員会への届出は相続登記が完了していなければできないため、相続が決まったら早めに手続きの準備を始めましょう。

贈与や遺言による農地名義変更

贈与や遺言により農地を取得した場合、相続とは異なる手続きが必要です。
ここからは、法定相続人以外の農地名義変更で必要な手続きを解説します。

農業委員会の許可が必要

法定相続人以外の人に名義変更する場合は、農地法第3条により農業委員会の許可が必要です。
農地の維持・拡大を図るほか、農業経営者以外に農地が取得されない目的で定められています。

第三者が、贈与や遺言により「特定遺贈」を受けて名義変更する際は、農業委員会へ申請書を提出しましょう。
審査を経て許可・不許可が決定され、許可基準は農地法第3条に定められています。
おもな要件は、農地を取得する人が農業従事者で、取得後の農地の面積が50a以上などです。

ただし、市区町村により異なる場合もあります。
特定遺贈とは、農地を特定して遺贈する方法で、取得する人が法定相続人であれば農業委員会の許可は必要ありません。
贈与や特定遺贈のほかに、売買・貸し借り・競売の場合も農地法による許可が必要です。

相続と同じ手続きでよい場合もある

遺言による遺贈には、特定遺贈のほかに「包括遺贈」があります。

包括遺贈とは、遺贈の対象となる財産を特定せず、割合のみを示す遺贈の方法です。
積極財産と消極財産のどちらも受け継ぎ、民法には相続人と同じ権利義務が認められているため、農地の受遺も相続と同じように扱われます。

したがって、包括遺贈で取得した農地の名義変更では、法定相続人でなくても農業委員会の許可は必要ありません。

相続とは申請者が異なる

相続で名義人を変更する場合は相続人が登記申請をしますが、贈与や遺言では登記権利者と登記義務者が共同で申請する必要があります。

登記権利者とは農地を取得する人で、登記義務者とは遺贈する人の法定相続人あるいは遺言執行者です。
遺贈や遺言による名義変更では法定相続人全員の承認が必要となり、所在がわからないなどの理由で協力が得られない場合もあります。
遺言執行者は遺言で選任できますが、指定されていない場合は家庭裁判所に選任の申し立てをしなければなりません。

農地名義変更後の活用方法と注意点

農地の名義変更が完了しても、土地をどのように活用すればよいかわからない方もいるのではないでしょうか。
農地の活用方法はいくつかあるので、将来を見通した計画を立てましょう。

農業経営

取得した農地を利用して、自分で農業を経営する活用方法です。
農業を始めるには、維持管理費や機械などの設備投資が必要になるほか、経験がない場合は採算が取れるまでに時間がかかるケースもあるため慎重に検討しましょう。

ソーラーシェアリングのように、農業をしながら発電するシステムを導入する際など、農業委員会の許可が必要な場合がある点にも注意が必要です。

貸し出す

自分で農業経営ができない場合、近隣の農家や一般の人に貸し出す方法もあります。
自分で借り手を探してもかまいませんが、見つけられない場合は自治体などの仲介制度を利用するとよいでしょう。
農地を貸し出すと賃料を得られますが、事前に農業委員会の許可を取らなければなりません。

宅地に転用する

農地としての維持が困難であれば、宅地に転用する方法も検討してみましょう。

ただし、転用には農業委員会の許可が必要です。
転用の申請後、農業委員会定例総会で審議され、事務処理が済んだら許可書が発行されます。
申請をしても許可が下りない可能性もあるため、ほかの活用方法も選択肢に入れておきましょう。

売却する

自分で管理する活用方法以外に、農地を売却する方法もあります。
農地を放置しておくと雑草や害虫、鳥獣被害が発生し、近隣に迷惑をかけるおそれがあるほか管理費がかかります。
貸し出したり宅地に転用したりしても、思うような利益が得られない可能性もあるため、売却して利益を出すのもおすすめです。
農地の売却にも、農業委員会の許可が必要です。

まとめ

農地の名義変更では、住宅や一般的な土地と異なり農業委員会への届出が必要です。
贈与や特定遺贈で取得する場合は、登記申請の前に農業委員会の許可を取らなければなりません。
申請や届出には期限が設けられているため、早めに手続きの準備をしましょう。

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