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生産緑地の解除が可能なケースとは?手続きの方法と注意点を解説

カテゴリ:不動産売却/買取

● 土地活用を検討中で生産緑地を解除する方法が知りたい
● 生産緑地が解除されると税負担が増えるって本当?
● 生産緑地を自治体が買い取らないときはどうなるの?

生産緑地の扱いに困っている方へ、生産緑地の解除手続きが可能になるケースから、具体的な手続きの方法と注意点、解除後の対応までを解説します。

この記事でわかること

● 生産緑地の解除手続きができるケース
● 生産緑地の解除手続きの流れと注意点
● 生産緑地の解除手続きをしたあとの対応

解除手続きが可能になるケースとは?

生産緑地は農地として管理するよう義務付けられており、建築物の新築・増築、宅地の造成、水面の埋め立てなどの利用に制限がかかるため、十分な土地活用ができません。

とくに農業以外の職に就いている場合、生産緑地の指定を解除して、土地の売却や活用ができないかと検討される方も多いでしょう。
解除できる要件は限られているので、どのようなときに手続きが可能になるのか、生産緑地の指定を解除できるケースを解説します。

指定から30年が経過

生産緑地の指定は30年と定められているため、指定日から30年が経過すると、申出基準日以降に生産緑地の解除の手続き(買取申出)が可能になります。
生産緑地の指定を受けた日を申出基準日といい、管轄の自治体で確認できます。

ただし、指定期間の30年が過ぎたからといって、自動的に生産緑地が解除されるわけではありません。
特定生産緑地にも指定されておらず、解除手続きもおこなわれない場合は、農地として使用管理する義務や建築や転用の行為制限は継続となります。
生産緑地の解除手続きをする際は、自分で手続きをする必要があるので覚えておきましょう。

怪我や病気で主たる従事者が営農不可能

主たる従事者とは、生産緑地の農地で農業従事者として中心的な役割を担い、農地基本台帳に記録されている方です。

また、従事者と同程度に農業に取り組んでいる方も同様にみなされます。
主たる従事者が1年以上の入院が必要な状態になるなど、重篤な怪我や病気をした場合、解除手続きが可能になります。
中心人物である農業従事者が不在になると、農業の継続が困難と判断されるからです。

解除手続きをするにあたり、農業委員会に申請して怪我や病気になった人が主たる従事者であると証明するための証明書が必要です。

具体的には「両目を失明する」「腕または足を損失する」「重度の精神障害・神経障害」などのケースが該当し、農業委員会は申請を受けてから現地調査をおこないます。
手続きの際は、農業を継続できない旨が記された医師による診断書なども必要になるため、準備する書類をしっかり確認しておきましょう。

主たる従事者が亡くなる

主たる従事者が亡くなった場合も解除手続きが可能です。
この場合は30年の指定期間に満たなくても、生産緑地の解除が認められます。

なお、主力となる農業従事者が2人以上存在するケースでは、残された人だけで農業の継続は不可能と判断されれば解除の手続きが認められます。

逆に、残された人だけでも農業を続けられる場合、生産緑地の解除はできません。
手続きの際は、主たる従事者である証明書のほか、死亡を確認するための戸籍謄本などが必要です。
要項が複雑で判断が難しいときは、生産緑地に詳しい不動産会社に相談するとよいでしょう。

生産緑地解除手続きの具体的な方法

解除の手続きをするためには、管轄の自治体に買取申出が必要です。
手続きの流れとしては、解除要件にあてはまるかどうか確認してから、早い段階で買取申出をおこない、自治体からの結果通知を待ちます。
ここでは、生産緑地の解除手続きの具体的な方法を解説します。

解除要件にあてはまるかどうかを確認する

生産緑地の指定解除の手続きをする際は、まず自身の生産緑地が指定解除できる要件に該当するかどうかの確認をおこないましょう。
指定から30年が経過している、主たる従事者が病気をしたり亡くなったりして営農できないなど、解除要件にあてはまるかどうかをチェックしてください。
生産緑地の指定告示日がわからないときは、自治体に問い合わせれば教えてくれます。
公式サイトに生産緑地地区指定のリストを載せている自治体もあるので、必要な方は確認してみるとよいでしょう。

自治体に買取申出をおこなう

買取申出とは、管轄の自治体に対して生産緑地の買い取りを請求する手続きです。
申出の際は、生産緑地買取申出書・同意書・印鑑証明書など、以下の提出書類を準備しなければいけません。
事前に問い合わせるなどして、提出漏れのないよう確認しておきましょう。

● 生産緑地買取申出書
● 同意書
● 印鑑証明書
● 登記事項証明書
● 生産緑地買取申出地の位置図・区域図
● 農業従事者証明ほか

これらは管轄の市役所や法務局、農業委員会などで取得できます。

ただし、登記事項証明書など、インターネットから取得すると法的効力がなく申出には利用できないため、注意が必要です。
解除の要件によって、医師による診断書や農業従事者の戸籍謄本など、必要書類が異なります。
自治体によって書式が違うケースもあるので、ホームページや窓口で事前に確認しておくと安心です。

自治体より通知が届く

自治体が生産緑地を買い取る場合は、申出から1か月以内にその通知が届きます。
時価を基準に買取価格が決定されて取り引きが成立すれば、公共用地となって生産緑地が解除され、手続き終了です。

ただし、自治体によっては、財政難などの理由で買い取りに応じないケースもあります。
自治体の買い取りが不可のときは、その通知が届いたあと、自治体により農業従事希望者への斡旋が2か月間おこなわれます。
斡旋期間内に購入希望者があらわれて、買取価格の協議が無事に成立すれば土地売却は完了です。

生産緑地解除手続きの注意点

生産緑地の指定が解除されると農地としての行為制限がなくなるため、自宅を建てたり売却して現金収入を得たりするなど、自由な土地活用が可能になります。

その一方で、生産緑地のメリットである税負担の軽減や納税の猶予などは適用されなくなるので注意が必要です。
ここでは、生産緑地の解除手続きをする際の注意点を解説します。

固定資産税の軽減がなくなる

生産緑地は一般農地と同様に扱われるため、固定資産税の税率は農地評価・農地課税となり、負担調整措置が適用されます。
当然ながら、生産緑地の指定が解除されればこの軽減措置は適用されません。
固定資産税が宅地並み評価・宅地並み課税となり、軽減措置で抑えられていた納税金額が約10倍にまでアップします。

とくに、生産緑地の解除後も農業を続ける方は、解除前に比べて固定資産税が大幅に増額されるため注意が必要です。
税負担が急激に上昇するのを防ぐ目的で「激変緩和措置」がとられているものの、5年の期限が設けられています。
5年が過ぎれば約10倍の固定資産税が課されてしまうため、生産緑地の指定を解除したあとは、早めの売却がおすすめです。

相続税の納税猶予がなくなる

生産緑地の指定を受けると、固定資産税と同様に、相続税も納税猶予の優遇措置が受けられます。

しかし、解除されればこの特例が適用されなくなり、猶予されていた相続税額に利子税を上乗せした金額を納めなければいけません。
この場合の利子税は原則年3.6%の割合となり、たとえば猶予納税額が3,000万円で10年特例を受ける場合では、利子税が約840万円にもなります。
生産緑地の買い取りは時価を基準として協議されるため、買い取りや斡旋が成立すれば納税できない事態は回避できるでしょう。

しかし、どちらも不成立だった場合、生産緑地の解除はされても現金は入らないため、納税に必要なお金は土地を売却するなどして工面する必要があります。

自治体が必ず買い取るわけではない

近年財政状況が厳しい自治体が多く、生産緑地の解除手続きをしても、必ず土地を買い取ってもらえる保証はありません。
斡旋により農業従事希望者が土地を買い取る可能性もありますが、農業希望者が減少している昨今、買い取りが成立する可能性は低いです。
結果、買主が見つからず、生産緑地が売れ残るケースも少なくありません。

申出から3か月経過しても買主が見つからなければ土地活用が自由にできるようになりますが、生産緑地の優遇措置は受けられなくなるため、重い税負担がのしかかってきます。
不動産市場に売り出しても、売却期間が長引くほど、経済的な負担を自己資金で強いられます。

場合によっては、解除手続きをせずに、そのまま土地を売却するのも1つの手です。
このような注意点を踏まえたうえで、不動産会社などの専門家に相談しつつ、生産緑地の指定解除と土地売却を検討するようにしましょう。

生産緑地解除手続き後の対応

生産緑地の解除手続きをしたあとは、自治体が土地を買い取るかどうかで対応が変わってきます。

ここでは、自治体が土地を買い取らなかった場合と、指定が解除されたあとに不動産を売却する場合の対応を確認しておきましょう。

自治体が買い取らなかった場合

自治体が買い取りをしなかった場合も、買い取りするときと同様に、申出から1か月以内にその旨を記した通知が届きます。

その場合は農業委員会によって農林従事者に向けて斡旋がおこなわれ、その間に購入希望者があらわれて、価格の協議が成立すれば生産緑地の売却は完了です。

もしも自治体の買い取りおよび農業従事希望者への斡旋が不成立に終わった場合は、申出から3か月を経過すると、住宅の建築や宅地の造成などの行為制限が解除されます。
その後都市計画審議会で生産緑地の指定が解除されたあとは、土地の開発や売買などもおこなえます。

解除後に不動産を売却する場合

生産緑地の指定が解除されたあとは、一般的な不動産売却と同じ方法で土地を売却できます。

まずは不動産会社に査定を依頼して、適正価格を算出してもらいましょう。
査定価格が出たあとは、売り出し価格や販売戦略などを不動産会社と相談しながら決定し、不動産会社が売却活動をスタートさせます。
買主が確定したら、売却価格や決済日を決めて売買契約を結びます。
決済と引き渡しが完了すれば、不動産の売却は完了です。
生産緑地は一般的な不動産と比較すると、制限や複雑な手続きが多く、専門性の高い案件です。
なかには解除手続きをせず生産緑地のまま売却したほうが良いケースもあります。
的確なアドバイスをもらうためにも、生産緑地の売買実績が豊富な不動産会社への相談がおすすめです。

まとめ

生産緑地を解除するには、指定から30年が経過した、主たる従事者の怪我や病気、死亡により農業が継続できないなどの要件を満たす必要があります。
解除の手続きをおこなっても、自治体が買い取りを拒否するリスクや解除後に税負担が重くなるリスクがあるため、しっかりと計画を立てて遂行しましょう。

売却を検討している場合は、解除手続き前の早い段階から生産緑地の知識や実績が豊富な不動産会社を探し、よく相談しましょう。

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